マンション売却での購入申込書のチェックポイント・価格交渉のコツ

内覧を経て「買いたい!」という方が現れると、購入申込書をもらうことになります。

いよいよ購入希望者とのやり取りが始まるので、慎重に、でも確実にステップを進めていく必要があります。

購入申込書とは

購入申込書とは、買主からの「買いたい!」という意思表示を書面にしたものです。買付申込書と呼ばれることもあります。

ただし契約書とは別モノです(後述)。

購入申込書には以下のようなことが書かれています。

  • マンション名
  • 住所・部屋番号
  • 購入希望価格
  • 住宅ローン利用の有無
  • 手付金の額
  • 契約締結の時期
  • 引渡しの時期
  • 購入希望者の氏名・住所

上記項目が書かれたA4サイズ1枚の書類を、不動産会社経由で受け取ることになります。

売買契約書との違い

よく勘違いされることもありますが、購入申込書をもらった段階では売却成立していません。

購入申込書はあくまでも、買主からの購入したいという “意思表示” にすぎず、必ず購入するということは保証されていません。

購入申込書と売買契約書の違い

双方(売主と買主)の合意 キャセルの可否
購入申込書 なし 可能
売買契約書 あり 不可能(※)

※例外として手付金放棄すればキャンセル可能

購入申込書は、わかりやすく例えるならば、一方的なプロポーズのようなものです。

もしかしたら買主の気が変わってしまって他の物件に浮気するかもしれないですし、そもそも何かしらのことが原因でマンション購入にさえ興味が冷めてしまうかもしれません。

売買契約書を締結してはじめて “結婚” なのです。売買契約書を締結するまでは、気を抜けません。

 

購入申込書のチェックポイント

購入申込書を受け取ったら、仲介をお願いしている不動産会社と一緒に以下項目をチェックします。

忘れてはいけないのが、購入申込書は「買主からの一方的な希望」であるため、すべてにその希望通りに合わせる必要はありません。

希望価格

もっとも大事なのが、希望価格です。買主が「この価格なら買いたい」という額を提示してきます。

普通は売り出し価格満額で提示されることは少なく、多少は値引きされた額が提示されることでしょう。

よくあるケースとしては、端数カットしたが価格が提示されます。売り出し価格3,980万円なら、希望価格3,900万円という具合です。

少しでも高値で売りたいのは当然ですが、ある程度は譲歩し、歩み寄ることも大切です。

どのように有利に価格交渉を進めればいいかは、後述しています

住宅ローン審査の見込み

マンション購入においては、ほとんどの方が住宅ローンを利用するかと思いますが、住宅ローン審査が通過しなければ当然利用できません。

そこで「住宅ローン審査に通過できるか」の見込みを確認しておくも重要です。不動産会社を通して、買主の見込み状況は確認できます。

もっとも望ましいのは、すでに「事前審査に合格している」買主です。事前審査に受かっていれば、ほぼ100%間違いなく住宅ローンを利用できるので、あなたにもきっちりとマンション代金を支払う能力があります。

非常に稀なケースですが、住宅ローンを利用せず、現金一括で全額を用意できるという買主もいます。当然、売る相手として適しています。

もし住宅ローン審査に通過する見込みがないのであれば、その買主へ売ることは止めてもいいかもしれません。時間をかけて待った挙句、審査に通らなかったとなれば契約も白紙になります。

同時に複数人から購入申込書をもらった場合も、「事前審査に合格している」買主を優先します。

手付金の額

契約時に買主が支払う手付金の額が記載されますが、あまりにも少額である場合は、引き上げを交渉します。

マンション価格の5~10%であることが一般的です。3,000万円のマンションの場合、少なくとも手付金は150万円という具合です。

手付金が少ないと、売買契約をキャンセルされる可能性が高まります。「手付放棄」といって買主はすでに支払った手付金を放棄することで、契約後でも自由にキャンセルできます。

買主としては「手付金が高い=キャンセルはもったいない」という心理が働きますので、もし5%以下であるような場合は上げてもらいましょう。

契約締結の時期

鉄は熱いうちに打て、です。買主の気が変わらないうちに、なるべく早く契約完了しましょう。

できれば購入申込書をもらってから2週間以内くらいには、契約書締結もしたいところです。もちろん買主の住宅ローン審査の期間にもよりますが、なるべく早いことに越したことはありません。

何度も繰り返しますが、購入申込書はあくまでも単なる “意思表示” です。きっちりと売買契約を結ぶまでは何が起こるかわかりません。

引渡しの時期

お金のこと以外にも、引渡しの時期についても事前確認しないとトラブルになります。

すでに空室になっていれば問題はないですが、まだ売主であるあなたが居住中の場合、当然のことですが引渡し時までには引越し完了させていなければなりません。

「今週末に契約、引渡しは2ヶ月後」という設定は可能です。

引越し先がまだ決まっていないのであれば、十分に時間に余裕を持たせておいた方が無難です。

 

購入申込書への回答方法

上記に対しては、口頭回答が一般的です。

買主からは購入申込 “書” として書面でもらいますが、売主から買主への回答は書面である必要はありません。

あなたが仲介をお願いしている不動産会社を通し、買主に回答が伝わります。

 

価格交渉のコツ

中古マンション売却において、ほぼ100%値引きを求められます。売り出し価格通りの満額で購入されることはまずありません。

値下げされることを前提に売り出し価格を決めますが、やはりそれでも価格交渉はされるものです。

できる限り値下げされずに買ってもらう、価格交渉のコツを紹介します。

端数だけを値引き

値引きを求められた時の王道テクニックとして、端数分だけを値引きするというものがあります。

3,980万円なら3,900万円にする、ということです。こちらが譲歩して値引きをしているので、買主側からすると「値引きに応じてくれた」となります。

ただしマンション売却においては端数分だとしても、数十万円の金額になりますので、安易に値下げすることは禁物です。

値下げすることを考慮し、あらかじめ端数込みの金額を提示する、という考え方が有効です。

「どれだけ出せるか」を提案させる

値下げ額をこちらから提案するのではなく、買主に「どれだけ出せるのか」を提案してもらいます。

質問を質問で返すような形になりますが、下手に値下げしすぎるともったいない取引になる可能性もありますし、逆に傲慢になりすぎて少ししか値下げしないと買主の熱が冷めてしまうという最悪の事態を迎えます。

値下げ要求への回答例

いただいた値段は厳しいです。しかし素敵な買主さんとのご縁ですから、こちらもできる限りギリギリまで譲歩します。いくらまでなら出していただけますしょうか?

と、支払える金額の上限を聞いてみます。つまり、買いたい人に値段を出させるのです。

あなたが運命の買主さんと巡り合ったように、買主さんも「運命の物件」と出会ったと感じています。あまりに弱腰になりすぎることなく、多少は強気に交渉してみるべきです。

とはいえ、最終的にいくらで売るか決めるのはあなたですが、プロである不動産会社のアドバイスも十分に聞きながら、慎重に判断してください。

 

購入申込書の注意点

キャンセルされる可能性

何度も繰り返しますが、購入申込書をもらった段階では、売買が成立したわけではありません。成立するのは、売買契約書を締結した時です。

売買契約書の締結前であれば、買主が「やっぱりやめた」と自由にいつでもキャンセルできます。違約金なども一切発生しません。

価格交渉に柔軟に対応しなかったり、回答にモタモタしていると、買主の熱が冷めてしまいます。売却チャンスを失います。

先述したようにある程度は価格交渉において譲歩し、また回答時間としては1~2日以内にぐらいにしておきましょう。

目の前の買主さんを大切にする

売り出して早い段階で買主が現れると、売主のあなたはきっと悩むことでしょう。

「売り出して1週間で買主が現れたなら、もっと待てばもっと高く買ってくれる人も出てくるんじゃないか」と。

でも、いま買いたいと言ってくれている、目の前の買主さんを大切にしてください。その後、買主が現れる保証はなく、売れ残るリスクだってゼロではありません。

のんびりと待ちながら売ると決めていれば別ですが、買ってくれる方がいるうちに買ってもらった方が賢明です。

 

まとめ

購入申込書についての注意点ばかり述べてきたので、少々暗い話になってしまいましたが、本来はとても明るいポジティブな話です。

あなたのマンションを「買いたい!」と言ってくれる方がいるのですから、これほど嬉しい状況はありません。

売買契約書を締結し、きっちり入金されるまでは気を抜かずに一気に進めていきましょう。

マンション売買契約書と契約当日の流れ