【マンション購入】抵当権とは – 登記・抹消・性質について

不動産においてよく見聞きする「抵当権」という言葉。

簡単に一言でいうなら担保のことです。

今回はこの抵当権についてわかりやすく解説していきます。

抵当権とは

抵当権(ていとうけん)とは、住宅ローンなどでお金を借りた時に、家やマンションを担保として確保しておく権利です。

ものすごく噛み砕いて言うと、金融機関(銀行など)が「お金貸してあげるけど、滞納とか続いたら家取り上げちゃうからね!よろしく!」と鎖をつないでいる状態です。

金融機関からすると、住宅ローンとして数千万円単位のお金を個人に貸し出すのはリスクがあります。必ず全額返済してくれるとは限らないからです。

そのため金融機関などの債権者(お金を貸す側)は、債務者(お金を借りる側)の不動産を担保とし、保険をかけておくのです。

したがって住宅ローンを利用する際には、原則としてほぼ必ず100%、抵当権が設定されます(付けられます)。

抵当権の実行

抵当権の実行とは、不動産を強制的に取り上げることです。

わかりやすく言うと「最初の約束破ったね?貸したお金ちゃんと返してくれてないよね?もう家取り上げちゃうね!」というイメージです。

住宅ローン返済が数ヶ月間も滞納されたり、返済する意思が見られない場合は、債権者(お金を貸す側)が債務者(お金を借りる側)の不動産を取り押さえ、自由に販売(競売といいます)することができます。

競売にかけた結果、新たな買手がつけば売却代金が手に入り、お金を取り返すことができます。取り返したお金は、住宅ローン未納分にあてます。

金融機関としても滞納分を取り返す努力をするよりも、さっさと売っぱらっちゃった方が効率よくお金を回収できるわけです。

抵当権の実行は、債務者(お金を借りる側、不動産所有者)の意思に関係なく、強行されますので、債務者は家を追い出されることになります。

抵当権は非常に強い力を持った権利なのです。

 

抵当権の設定

抵当権を不動産に付けることを、「抵当権の設定」といいます。抵当に入れる、と言われることもあります。

抵当権設定登記

抵当権の設定は書面(契約書)だけでも効力がありますが、一般的には「抵当権設定登記」をします。

抵当権設定登記とは、国の機関である法務局に「この家の所有者がお金を借りた銀行に住宅ローンを払えなくなったら、その銀行が家を取り上げてもOKという契約をしました」という届け出(登記)をすることです。

届け出をされた内容については国が保証をしてくれますし、登記されたことで効力が増します。お金を貸した金融機関にとっては安心材料になります。

抵当権設定登記は、金融機関が提携している司法書士に委託するケースがほとんどです。

抵当権の複数設定

抵当権は、一つの目的物(不動産)に重ねていくつも設定できます。

複数の抵当権が設定される場合、早く設定された順に、1番抵当権、2番抵当権…と順位付けされます。

抵当権の順位

例)金融機関A社から3,000万円を借り、その後B社から2,000万円を借り、C社からも500万円借りた

  • A社:1番抵当権
  • B社:2番抵当権
  • C社:3番抵当権

抵当権が複数設定されている状況において、抵当権の実行によって競売にかけられた場合は、1番抵当権から順に優先して弁済(返済)されていきます。

2番抵当権、3番抵当権は全額弁済されない可能性があります。

具体的なケースに置きかえて見てみましょう。

弁済額の決め方

例)先の事例(抵当権の順位の例)の状態において、抵当権が実行され競売にかけた結果、4,000万円で売却できた

  • A社:1番抵当権 → 3,000万円を受け取る
  • B社:2番抵当権 → 1,000万円を受け取る
  • C社:3番抵当権 → 0万円を受け取る(受取なし)

この場合、1番抵当権A社から優先的に弁済(返済)されていくのでA社は貸した金額3,000万円を全額受け取れます。

次に優先されるのは2番抵当権B社ですが、すでに売却金額は1,000万円しか残っていないので(先にA社に3,000万円支払っているため)、B社は2,000万円貸し出していますが1,000万円しか受け取ることはできません。

C社は500万円貸し出していますが、1円たりとも受け取れません。

このように抵当権の順位によって弁済(返済)される金額に大きく差が出てしまうので、場合によっては抵当権の実行・競売がなされたとしても、損失が生じてしまう金融機関もあります。

さらに売却金額が2,500万円だった場合は、たとえ1番抵当権A社だとしても全額弁済されないことになります。

抵当権は、債務者(お金を借りる側)のリスクですが、債権者(お金を貸す側)にとってもリスクであると言えるのです。

 

抵当権の抹消

抵当権は永久的に設定されるものではありません。

住宅ローンの返済が終わった際には、抹消(外す)ことができます。

貸したお金が全額返ってくれば金融機関としても安心できるため、もう「抵当権」という担保が不要になるのです。

抵当権抹消登記

抵当権を外すことを「抵当権抹消登記」といいます。

住宅ローンを利用する際には抵当権が設定されますが、住宅ローンの全額返済が完了すれば、抵当権を抹消できます。

しかしながら、ローン完済したからといって、自動的に抹消されるわけではありません。

金融機関や不動産会社が抹消手続きをしてくれるものではないので、自分で手続きする必要があります。

ローン完済後に金融機関から書類一式を渡されますので、その書類に必要事項を記入し法務局で届け出(抹消登記)をします。

しかしながら、抵当権設定契約証書(登記済証)や登記原因証明情報など、聞きなれない書類を用意をしたりと一般人にとっては難解です。

そのため不動産登記の手続きを代行できる司法書士に委託するのが一般的です。委任状に署名捺印すれば、あとは全てお任せできます。

当然、司法書士に報酬(委託料)を支払うことになりますが、確実に抹消してもらうためにも惜しむべきではありません。

おおよその相場は5,000円~20,000円程度です。

 

抵当権の性質

抵当権にはちょっと変わった4つ性質があります。

  • 物上代位性
  • 不可分性
  • 随伴性
  • 付従性

聞き慣れないと思いますので、それぞれ説明します。

物上代位性

物上代位性(ぶつじょうだいいせい)とは、抵当権の目的物(不動産)がなんらかの理由で消失したとしても、代わりの他のものを目的物として抵当権を維持し続けられる性質のことです。

たとえば抵当権の目的物であった家が火事で消失してしまっても、火災保険などの保険料を抵当権者(不動産の差し押さえ権利を持っている側、金融機関など)が受け取れるということです。

不可分性

不可分性(ふかぶんせい)とは、抵当権の目的物(不動産)は抵当権抹消まで部分的に切り分けることができない性質のことです。

たとえば金融機関から5,000万円を借りて300㎡の土地を購入し、その土地に抵当権が設定されたとします。

頑張って4,500万円(全額に対して90%)返済した場合でも、相応する270㎡の土地(300㎡に対して90%)の抵当権が抹消されることはありません。この場合でも300㎡すべてに対して抵当権が設定されたままです。

「9割返済したんだから、9割は抹消してよ」という言い分は通用せず、ローン完済しない限りは、抵当権は一切抹消されません。

随伴性

随伴性(ずいはんせい)とは、抵当権者(不動産の差し押さえ権利を持っている側、金融機関など)に変更があっても、引き続き抵当権は設定されたままであるという性質のことです。

抵当権者A社がなんらかの理由で、債権(不動産の差し押さえ権利)をB社に譲渡(売却)したとします。この場合、抵当権者はB社に変更になりますが、不動産に設定されている抵当権はそのままになります。

付従性

付従性(ふじゅうせい)とは、被担保債権(借金)が消滅すれば担保物権(抵当権)も消滅するという性質です。

住宅ローンという借金がなくなれば抵当権もなくなる、ということはこれまで解説してきた通りです。

 

まとめ

抵当権は、不動産購入や売却にあたっては必ずといっていいほど出てくる言葉です。

住宅ローンを利用する際には金融機関が手続きをほぼ勝手に進めてくれるので、よく理解していなくても物事が進みます。

しかしローン完済後、抵当権を抹消する際は金融機関は動いてくれませんので、自ら動かなければなりません。

抵当権について細部まで理解する必要はありませんが、「ローン完済したら抹消する必要がある」ということだけは、頭の片隅に入れておくと良いでしょう。