売り出し価格が決まると、いよいよ不動産会社があらゆる手法を使って購入希望者を探してくれます。
少しでも高値で売れれば不動産会社にとっても利益が大きくなるため、必死になって見つけ出してくれます。
しかしながら、不動産会社によっては売り出し活動が十分でない場合もあるので、どのような方法があるのかを把握しておいてください。必要に応じて不足している広告手法を指摘・提案しましょう。
不動産会社に事前確認すべきこと
マイソクの有無
「マイソク」という言葉は聞いたことないかもしれませんが、以下のような「物件概要」をペライチ(1枚)にまとめた資料のことです。
このマイソクを事前に、あなたの目で確認しておくことをおすすめします。仲介依頼した不動産会社が作成・所有しているはずです。
※元々はこれらの資料を作成するマイソク社の意味ですが、現在では資料そのものをマイソクと呼びます。
売却だけでなく賃貸でも使われるので、アパートを借りる時などに、このマイソクの白黒コピーを不動産会社に見せてもらったことがある方も多いでしょう。
そのくらい不動産取引においてはベースとなる資料であり、あらゆる広告・宣伝活動の情報源となるため、このマイソクに間違いなどがあると、その他全ての活動に悪影響を及ぼしてしまいます。
また購入希望者に渡す物件概要としても、ほとんどの場合はこのマイソクが渡されますので、その物件が魅力的かどうかを左右する重要な判断材料にもなりえます。
買い手(購入希望者)のための資料であり、売り手であるあなたに見せることは普通はありませんが、「一応マイソクを確認させていただきたいのですが?」と申し出れば、素直に確認させてくれます。念のためやっておくべきです。
レインズ
レインズとは不動産業界だけが操作できるネットワークシステムのことであり、このレインズに売却物件が登録されているかを確認します。
登録されることで、レインズを通して他の不動産会社にも見つけてもらいやすくなり、売却先が決まりやすくなることもあります。
レインズに登録されると「登録証明書」が発行されるので、不動産会社に念のために見せてもらうと安心できます。
しかしながら登録証明書を見せた後にレインズから登録削除する悪質業者もいるので注意が必要です。
対策など詳しくは以下記事をご覧ください。
≫【不正対策】レインズ登録証明書と取引状況(ステータス)の確認方法
広告宣伝の種類
- チラシ・ポスティング・新聞折込
- インターネット広告
- 不動産ポータルサイト
- 不動産専門誌
- 現地看板
- 自社HP・店頭
どれも不動産会社の判断で、もっとも効果を得られる内容や時期を決定します。
チラシ・ポスティング・新聞折込
「今の時代にチラシ?」と思われるかもしれませんが、このアナログな手法が今でも効きます。
あなたの自宅ポストにも不動産に限らず、様々なチラシが入っていませんか?ある一定数の効果があるからこそ、今でもチラシ・ポスティングがなくならないのです。全く効果がなかったらどの会社も辞めているはずです。
特にマンションにおいては、同じ地域内で購入を考えている方が少なくなく(同エリアの賃貸から→購入マンションへ)、売却物件周辺への新聞折込チラシは大きな期待ができます。
物件や市況にもよりますが、一般的にはチラシ効果はセンミツ(1000枚配布したら3人から反応あり)とされており、数千~数万単位で配布することが多いです。後述しますが、費用はすべて不動産会社が負担します。
インターネット広告
最新のアドテクノロジーを駆使し、ネット上で購入希望者を “確保” します。
なんとなくネットサーフィンしてると「あれ?これ自分が興味あるやつだ」と思ってしまうほどに、最近のネット広告は “個人” に自動最適化されています。
一般的なバナー広告はもちろん、検索結果上位に表示されるリスティング広告、閲覧履歴や趣味嗜好を解析して表示するリターゲティング広告やサジェスト広告、FacebookやTwitterなどへのSNS広告・・・
など例を上げたらキリがありませんが、これらを使って費用対効果が最大化されるように広告費を投下・調整していきます。
不動産ポータルサイト
スーモやアットホームなどの大手ポータルサイトに掲載します。
説明するまでもなく、不動産を探している方はほぼ100%に近い割合でこれらのポータルサイトを利用しています。ポータルサイト内を検索した際、あなたの物件が表示されるか否かで大きく反響が異なるのも、言うまでもありません。
多少の違いはありますが、たとえばスーモだと1枠(1物件)掲載/月3万円、10枠(10物件)/月15万円ほど広告掲載費がかかります。
不動産専門誌
住宅情報館、住まい情報、スーモ特別別冊、ルームズ、REad(リード)、くらしーの・・・
まだまだ紙媒体としての不動産専門誌も数多く存在してます。
ネット媒体に比べると優先度は低くなりがちですが、50~60歳代の方をターゲットにする場合には、このような雑誌への掲載も有効です。
現地看板
売却物件の敷地内に立て看板を置く方法です。
不動産においては現地を直接見ること以上に情報を得られる手段はないので、チラシ同様に、アナログなこの広告が今でも効果があります。
しかしながら戸建の場合と違い、マンションでは管理組合のルールや同マンション内のご近所さんへの配慮が必要なため、現地看板を置けない場合もあります。
自社HP・店頭
不動産会社の自社ホームページに掲載します。
掲載費用などは一切かかりませんが、スーモなどに比べると集客力は劣るため、大きな効果を期待するのは難しいです。
しかしながら、無料なのでやらない選択肢はありません。
不動産会社の店頭、路面に面した窓ガラスや看板に掲載もします。街の不動産屋さんをイメージするとわかりやすいですが、足を止め熱心にチェックしている方も少なくありません。
賃貸に比べると売買は多くはないですが、同様に無料なのでほぼ必ずやります。
営業活動
- 一般客
- 投資家
- 法人
不動産会社の営業マンが、上記ターゲットに営業します。
一般客
「自分たちが住む」ためにマンションを探している層です。
新規の一般客
スーモなどのポータルサイトからの問い合わせ、店頭チラシ・看板からの来店など、その不動産会社にとって初めてとなるお客さんに営業します。
基本的は “待ち” の営業スタイルとなるため見込み顧客数はコントロールしにくいですが、「今すぐに買いたい」などの購入意欲が強い方が突然来店することもあるので、不動産会社側としては重要なターゲットになります。
既存の一般客
以前にその不動産会社に来店したことはあるものの、取引成約には至っていない、いわゆる「顧客リスト」に載ったお客さんにも営業します。
すでに購入希望条件をヒアリングしているので、条件がマッチするマンションが出てきたら、これまた既に聞き出している電話番号やメールアドレス宛てに提案します。
最近ではほとんどメールでのやり取りが多いのですが、ここで先述したマイソク(のPDF版など)が送付されますので、価格情報だけでなくマイソク内での魅せ方が重要になってきます。
投資家
「誰かに貸して家賃収入を得る」ためにマンションを探している層(マンションオーナー)です。
不動産会社によっては一般客だけではなく、不動産投資オーナーの強力な人脈ネットワークを持っている場合があります。マイソクとともに、想定利回りなどの収益情報を提案します。
法人
多い事例ではないですが、売却相手が法人であるケースもあります。
マンションの1室をオフィスとして使ったり社員寮として買い上げる場合です。検討してもらえる法人へ営業マンが提案します。
※不動産会社が購入する場合は「買取」と呼び、今回の話とは異なります。詳しくは不動産売却の種類-「仲介」と「買取」の違いとはをご覧ください。
活動・経過報告
売却を任された不動産会社は、売り主に「宣伝活動、販売状況はどうなのか」を報告する義務があります。
報告方法は特に規定されていませんが、最近はメールがほとんどです。電話などの口頭だと言った言わない問題にもなるリスクがあるので、証拠が残るメールが望ましいです。
共有してもらった報告内容を元に、「どんな人が興味を持っているのか」「今後どう売っていくのか」「値下げも検討するのか」などを相談・判断します。
契約形態によって異なりますが、以下の通りです。
形態 | 報告義務 | 頻度 |
一般媒介契約 | なし | ー |
専任媒介契約 | あり | 2週間に1回以上 |
専属専任媒介契約 | あり | 1週間に1回以上 |
※契約形態など詳しくは一般媒介と(専属)専任媒介契約の違いと選び方をご覧ください。
広告の費用負担
不動産会社が全額負担
広告宣伝や営業活動の費用を、不動産会社から請求されることはありません。厳密に言うと、売却時に支払う仲介手数料の中に含まれています。
広告・営業費としては、以下のようなものが該当します。
- チラシの印刷・配布費
- ネット広告への出稿費
- サイトや情報誌への広告掲載費
- 現地看板の製作費
- 営業で使う電話代
- 人件費
内容や期間、関わっている人数にもよりますが、上記のようなことをすれば少なくとも50~300万円前後はかかるでしょう。たとえばチラシ配布では、売却価格の5%が平均と言われています。
この “投資” を回収し利益を得るためにも、不動産会社は必死に売却成功をさせます。
特別依頼は支払い必要
原則的には支払いの必要はないですが、例外はあります。
売り主側の特別な要求によって実行した広告・営業活動に対しては、別途請求されることがあります。
たとえば、
- 「△△に営業をかけてくれ」
- 「富裕層が多そうな◯◯のサイトに載せてくれ」
などの売主からターゲットや掲載箇所を指定した要望が該当しますが、別途費用発生する場合は、事前に不動産会社が教えてくれるのが普通です。
しかしながら売却経験が何度もあるなら特別な要望を出してもいいですが、基本的にはプロである不動産会社に任せた方が成功しますし、余計な費用が発生することもありません。
※売却できなかった場合でも費用請求されることはありません。解約違約金などのペナルティを支払う必要もないです。
注意ポイント
誇大広告
取引金額が特に大きい不動産業界では、チラシなどで表現できる文言に制限があります。誇大広告による誤解やトラブルを防ぐためです。
具体的には、
- 「格安」「激安」「堀出し物」などの用語
- 「日本一」「抜群」「当社だけ」などの表現
- 「完全」「完ぺき」「絶対」「完売」などの表現
- 「最高」「最高級」「一級品」など最上級を意味する表現
- 著しく事実に相違する表示
などの文言は使用できません。
通常であればこれらの業界ルールを不動産会社が熟知しているはずなので問題ないと思いますが、万が一マイソクや広告文面などに見当たるようなことがあれば、すぐに指摘・修正してもらってください。
不要なトラブルを招き、売却できない事態になったら最悪です。
不動産会社が確信犯の場合(NGなのを知っててやってる)は悪質なので、すぐに媒介契約を解約し、別の不動産会社に依頼してもらってください。
広告実費などは支払う必要がありますが、そのまま売却依頼をする方がよっぽど危険です。
途中キャンセルについて詳しくはマンション売買を途中キャンセルする場合-手付解除期日、住宅ローン特約とはで解説しています。
不当な広告費の請求
先述の通り、広告・営業活動費用は不動産会社が負担します。これは不動産業界の法律(宅建業法第46条第2項)によって定められており、違反すれば行政処分の対象になります。
しかしながら、当たり前のように「広告費にこれだけかかったので支払いお願いします」と別途請求してくる悪質な不動産会社がいることも事実です。売り主の無知につけ込んで来るのです。
不動産売却なんて人生で何度も経験するものではありません。大半の人がはじめてなので、プロである不動産会社にそのように請求されれば、何の疑いもなく支払ってしまう可能性もあります。
繰り返しになりますが、広告・営業活動費用は支払う必要はありません。仲介手数料に含まれているので、別途請求されるようなことがあれば、前項同様に途中キャンセルも選択肢に入れてください。
まとめ
不動産売却においては様々な方法がありますが、不動産会社によってはレインズ登録と既存顧客リストにメール案内したら放置・・・
というスタイルの場合もあります。
媒介契約を結ぶ前に「うちのマンションをどのように売ってくれますか?」と聞いてみて、不動産会社の良し悪しを判断しても良いでしょう。
売ることに“本気”“積極的”であれば、それ相応の回答が返ってくるはずです。