訪日外国人は毎年増えており、また2020年に東京オリンピックが開催されることもあり、これまで以上に日本は世界から注目を浴びています。
日本に永住したいという方だけでなく、ビジネスとして日本に投資用マンションを持っておきたいという方が急増しています。
今回は、そんな外国人の方々に不動産売却をする際の注意点などについて解説しています。
外国人へ売却可否
そもそも日本人が所有している不動産を、外国人に売ることは可能なのでしょうか?
結論からいうと売却可能です。売却までの大まかな流れも変わりません。
日本に住んでいる外国人
日本に住んでいる外国人(居住者)へ売却する際は、手続き上は日本人に売却する場合と比べても、大きな違いはありません。
「永住権」を持っていれば住宅ローンを利用することもできますので、売る側としても安心です。
海外に住んでいる外国人
海外に住んでいる外国人(非居住者)への売却は可能ですが、日本人へ売却する場合とは、手続きが多少異なります。
まず財務大臣への届出義務があります。
非居住者が日本国内において不動産取得した場合、これは外国為替及び外国貿易法(外為法)という法律上の「資本取引」にあたります。
不動産取得から20日以内に日本銀行を経由して、財務大臣宛てに、所定書類によって取得名義人の氏名や取得価格などを報告しなければなりません。
ただし、以下の場合、報告は不要です。
1. 非居住者本人または当該非居住者の親族若しくは使用人その他の従業員の居住用目的で取得した場合
2. 日本において非営利目的の業務を行う非居住者が、当該業務遂行のために取得した場合
3. 非居住者が本人の事務所用として取得した場合
4. 他の非居住者から不動産を取得した場合
また永住権を持たない非居住者は住宅ローンを利用できないので、ここも大きな違いです。
詳しくは、次項で解説します。
売却時の注意点
支払い能力
一般的に住宅ローンを利用できるのは日本人、もしくは日本の永住権を持つ居住者です。永住権を持たない外国人は、住宅ローンを利用できません。
お金を貸す側の金融機関の気持ちを考えれば理由は明白で、日本国内におらず海外に住んでいる外国人に数千万円単位のお金を貸すでしょうか。非常に大きなリスクがともないます。
永住権を持つ居住者であればローンを利用できるので売る側としても安心ですが、非居住者の場合はローンが使えないので、支払い能力を持っているかどうかを見極めなければなりません。
しかしながら、住宅ローンを利用できない者に不動産売却するリスクは大きいので、そのリスク回避のために、即金取引(全額一括支払い)をすることが一般的です。
また不動産売買においては高額な取引になるため、銀行間での口座取引が普通です。現金手渡しでの支払い・受取は、まずありえません。
買主(購入希望者)である外国人が、日本国内の銀行口座を持っているかどうかについても確認しておいてください。
本人確認
居住者であれば「外国人登録証明書」を持っているはずですので、これを本人確認書類として扱います。
持っていない場合は、役所で発行してもらえます。
非居住者の場合は「宣誓供述書」で本人確認します。
宣誓供述書とは、日本国内における住民票のようなもので、氏名・生年月日・性別などの個人情報が記載された公的な書類であり、その国の大使館や公証人によって発行することができます。
居住者/非居住者ともにパスポートもは必ず持っていますので、パスポートのコピーも取っておきましょう。
書類の翻訳
日本国内の不動産取引においては、日本の法律が適用されます。
したがって売買契約書や重要事項説明書も原則として日本語になりますが、言葉が通じず内容理解できないと同意も得られないことから、このような場合は契約が成立しません。
買主(購入者)である外国人が日本語も通じるのであれば問題ありませんが、不動産の契約書類は、我々日本人にとっても馴染みのない言葉も多く理解に苦労します。
外国人に売る場合は、売買契約書や重要事項説明書を翻訳した書類も用意し、日本語書類に添付します。
契約時には書面だけでなく口頭での説明も重要になりますので、通訳を付けることもあります。
通訳を付ける場合は、後日のトラブルを避けるためにも、その通訳にも売買契約書と重要事項説明書に署名・捺印してもらいます。
捺印・印鑑
売買契約成立のためには、本人所有の印鑑による捺印も必須です。
日本居住者であれば印鑑を持っている方がほとんどですが、非居住者の場合は本国で印鑑文化がなければ、持っていない可能性も十分にありえます。
その際は、来日時に日本で作ってもらうのが良いでしょう。
なお契約書への捺印は実印が望ましいですが、認印でも可能です。
まとめ
中国人や欧米人が、投資用マンションとして、日本国内の物件を購入する事例が増えています。
売る側としては、もっとも高値で買い取ってくれるのあれば、相手の国籍はそれほど問わないでしょう。
しかしながら、特殊な手続きや注意は欠かせません。
特に非居住者の場合は住宅ローンが組めないので、非居住者へ売る際は「全額一括支払い」できる継続的があるかなどの慎重な判断が必要です。