マンションや土地などの不動産は、複数人で共同所有することがあります。
今回はそんな共有名義不動産の売却について、解説していきます。
共有名義と持ち分
共有名義の不動産
複数人で一つの不動産を所有するケースとしては、以下のような例が考えられます。
- 夫婦でお金を出し合ってマンション購入
- 親子で二世帯住宅を購入
- 親の死去により子供2人が相続
特に昨今では夫婦共働きの家庭が増え、夫婦共同で家を買うことも珍しくありません。
二世帯住宅はそれほど多くはありませんが、相続によって所有者が複数人になることは大いに考えられます。
持ち分
持ち分とは、共有名義の不動産を「どのくらい所有しているか」という割合のことです。
名義人が2人であれば1/2ずつ、3人であれば1/3ずつになりますが、必ずしも均等である必要はありません。購入資金の出し具合によって、2人だとしても1/3と2/3のように持ち分設定されていることもあります。
ちなみに持ち分とは、所有面積のことではなく、所有権利を表します。
上記イメージ図のように、持ち分1/2の場合、その土地面積の半分を所有しているのではなく、所有権の半分を持っているということです。
戸建ての場合も考え方は同じで、建物の半分を持っているのではなく、戸建て所有権の半分を持っているという意味です。
ちなみに売却金額を受け取れる割合は、この持ち分に基づきます。
共有名義不動産の売却
所有者全員の承諾
共有名義の不動産を売却する際には、所有者全員の承諾が必要になります。
つまり2人なら2人、10人なら10人全員が売却に同意しなければなりません。
売却手続きとしては、契約日に所有者全員が立ち会って売買契約書に押印・署名します。本人確認書類や住民票、印鑑証明書、登記済権利書(登記識別情報)を用意しておく必要もあります。
そして決済日(売却金額の入金日)には、再び所有者全員が銀行に立ち会います。
したがって、計2回は最低でも所有者全員が集まる必要があります。
代理売買の委任
共有名義不動産を売却するにあたっては、所有者全員が集まるのが困難な場合もあります。
所有者が高齢である場合、怪我や病気などの場合、遠方に住んでいる場合などです。
このような場合は、委任状を作成することで売買手続きを第三者に委任することができます。
信用できる人物に委任することで、本人に代わって売却を進めます。
口頭での委任でも法律上は問題ありませんが、不動産売却は高額な金額ですし、『言った言わない』などのトラブルを避けるためにも書面で委任状を作成しておくことが一般的です。
委任状の書式(フォーマット)は決まっていないので、当人同士が納得できる形で作成すればいいのですが、以下内容は必ず明記しておくことをおすすめします。
- 売買物件の表示
- 売却条件(金額、引渡日など)
- 委任する権限
- 委任者と受任者それぞれの押印・署名
承諾が取れない場合
共有名義の不動産を売却しようと思っても、離婚問題や兄弟間が絶縁状態の場合は、所有者全員の承諾が取れない可能性もあります。
持ち分のみを売却
自分の持ち分の範囲であれば自由に売買することができ、他の所有者の承諾も必要ありません。
しかしながら、現実的には持ち分だけを購入するという買主はまず存在しません。
なぜなら先述した通り、持ち分とは所有面積のことではなく所有権利のことですので、「権利の1/2だけ売る」ことは極めて困難です。
個人に売却することは非常に難しいですが、持ち分の買取専門とする不動産会社もありますので、プロに相談してみるのも選択肢の一つです。
共有所有者に売却
持ち分のみを外部の個人に売却することは困難であることは、説明した通りです。
しかしながら、共有所有者に売ることは比較的簡単です。
その不動産の所有権を譲渡し、自分の持ち分を現金で買い取ってもらうのです。
この共有所有者に売却するという場合も全員の承諾が必要なため、もし3人以上で所有している場合は売却相手以外のもう1人の所有者の同意も得なければなりません。
まとめ
不動産を共同所有しているものの、離婚や兄弟間の喧嘩などによって売却トラブルを生むケースは少なくありません。
関係性の回復が見込めるのであれば、売らずにそのまま所有しておく方法もあります。
しかしながらその見込もない場合は、事態がより深刻化する前に、早めに売却手続きを進めたほうが良いかもしれません。