相続したマンションはすぐに売却すべき!その理由や税金を徹底解説

近年はマンションも相続する人が増えてきました。

相続して自分で住まないマンションは、すぐに売却すべきです。

そこでこの記事では、こんな疑問にお答えします!

・相続したマンションは、やっぱり売却すべきなの?

・相続したマンションを売却するにはどうしたら良いの?

・相続したマンションを売却したときの税金はどうなるの?

上記のような悩みをお持ちの人に向けて、相続対策専門士(公認不動産コンサルティングマスターの相続のスペシャリスト)である筆者が、これまでの経験や知識を元に相続マンションの売却について解説します。

相続マンションを売却すべき理由の他、売却に必要な手続き、売却で発生する税金の節税についても包み隠さず解説します。

ぜひ最後までご覧ください。

1.相続マンションはすぐに売却すべき理由

マンションは将来的に建て替えることが非常に難しい建物です。

このまま持っていても朽ち果てるだけなので、自分で住まないのであれば、すぐに売却することをおススメします。

マンションの建て替えは、原則として区分所有者と議決権の5分の4以上の賛成が必要となります。

多くのマンションはこの同意が得らえずに建替えられないことが予測されています。マンションは一戸建てのように建て替えをして復活することができない資産です。

何代にも渡って引き継げる資産とはなりにくいので、相続が発生したら早めに売却しましょう。

 

2.売却には名義変更が必要

相続したマンションを売却するには名義変更が必要です。

相続した段階では、マンションは相続人の共有状態となっています。共有のまま売るのであれば、一度、相続人全員で登記簿謄本を共有で名義変更を行います。

相続人の誰かの単独所有とする場合には、その相続人の単独所有の名義変更が必要となります。まずは、共有のまま売るか、遺産分割して売るか、相続人同士で売却方針を決めるようにして下さい。

名義変更を終えたら、売却のスタートラインに立つことができます。

 

3.マンション売却時の税金

この章では相続したマンションを売却したときの税金について解説します。

3-1.税金の基本

マンションを売却したときは、以下の計算式で計算される譲渡所得がプラスの場合のときに、発生します。

譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用

譲渡価額とは売却額のことになります。譲渡費用とは、仲介手数料等、売却に要した費用になります。

取得費については、土地については購入額ですが、建物については購入額から減価償却費を控除した残額となります。

減価償却とは、建物の取得原価を法定耐用年数の期間に応じて規則的に減額していく会計上の手続きのことです。

建物の減価償却費は以下の計算式で求めます。

減価償却費の求め方

減価償却費 = 建物購入価格 × 0.9 × 償却率 × 経過年数

マンションのようなマイホームの鉄筋コンクリート造の建物の償却率は「0.015」となります。

ここで、親が40年前に以下のような新築マンションを購入したときの取得費を計算します。

構造:鉄筋コンクリート造

土地購入価格:1,000万円

建物購入価格:2,000万円

築年数:40年

取得費は、まず建物の減価償却費を求めてから建物の取得原価を計算し、その後、土地の取得費と合算して算出します。

減価償却費 = 建物購入価格 × 0.9 × 償却率 × 経過年数

= 2,000万円 × 0.9 × 0.015 × 40年

= 1,080万円

建物取得費 = 建物購入価格 - 減価償却費

= 2,000万円 - 1,080万円

= 920万円

取得費 = 土地購入価格 + 建物取得費

= 1,000万円 + 920万円

= 1,920万円

例えば、上記のマンションが、2,500万円で売却できたときの譲渡所得を計算します。

譲渡価額:2,500万円

取得費:1,920万円

譲渡費用:80万円

譲渡所得は以下のようになります。

譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用

= 2,500万円 - 1,920万円 - 80万円

= 500万円

税金は、譲渡所得に税率を乗じることで求めますが、税率は所有期間で決まります。

所有期間は5年以下であれば短期譲渡所得、5年超であれば長期譲渡所得とされます。

所得税 住民税 合計税率
短期譲渡所得 30% 9% 39%
長期譲渡所得 15% 5% 20%

相続の場合、親の所有期間を引き継ぎますので、親が5年超保有していれば、相続人(子供など)が売却しても、長期譲渡所得が用いられます。

上述の例だと、所得税および住民税は以下のように計算されます。

所得税および住民税 = 譲渡所得 × 長期譲渡所得税率

= 500万円 × 20%

= 100万円

 

3-2.節税策はとにかく売買契約書を探すこと

相続したマンションを売却したときは、税金を節税するためには、とにかく購入当時の売買契約書を見つけ出すことが最大の節税策になります。

相続したマンションが、相続人(子供たちなど)の自宅ではない場合、売却しても節税できる特例がありません。

もし、相続したマンションの取得費が分からない場合は、概算取得費を用います。

概算取得費とは、譲渡価額の5%となります。

例えば、前節の例で取得費が分からないケースで税金がいくらになるかを計算してみます。

譲渡価額:2,500万円

取得費:不明

譲渡費用:80万円 (仲介手数料等)

譲渡所得は概算取得費を用いて以下のように計算されます。

譲渡所得 = 譲渡価額 - 概算取得費 - 譲渡費用

= 2,500万円 - 2,500万円×5% - 80万円

= 2,295万円

すると、税金は以下のようになります。

所得税および住民税 = 譲渡所得 × 長期譲渡所得税率

= 2,295万円 × 20%

= 459万円

前節の取得費が判明していたケースでは税金が100万円でしたが、取得費が分からないケースでは税金が459万円にもなってしまいました。

同じマンションを売却したのにもかかわらず、税金が359万円もアップしています。

このように、取得費が分からないと税金が増えてしまうため、相続マンションを売却する場合には、まずは購入当時の昔の契約書を探すことが重要です。

 

3-3.マンションでは使えない3,000万円特別控除

被相続人(親のこと)の住んでいた自宅が、相続で空き家となった場合、その空き家を売ると譲渡所得から3,000万円を控除してくれるという特例があります。

この特例が使えれば、ほとんどの場合、譲渡所得がゼロ(マイナスの場合はゼロ)となりますので、税金は発生しません。

3,000万円特別控除を使った場合の譲渡所得

譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用 - 3,000万円

ただし、相続空き家の3,000万円特別控除を使うには、以下の要件があり、マンションは利用できません。

1.相続開始直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋であること。

2.昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること。

3.マンション以外の家屋であること。

4.相続開始直前においてその被相続人以外に居住したいた者がいなかったこと。

5.相続のときから譲渡のときまで事業の用、貸付けの用または居住の用に供されていなかったこと。

残念ながら、相続したマンションを売却する場合には、税金を抑えてくれる特例は存在しないというのが現状です。

取得費を判明させることが最大の節税策ということになります。

 

3-4.相続税を払った人だけ使える取得費加算

相続税の納税義務のあった人は、「取得費加算の特例」というものを使えます。

取得費加算の特例を適用するには、以下の要件が必要です。

1.相続や遺贈により財産を取得した者であること。

2.その財産を取得した人に相続税が課税されていること。

3.その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること。

取得費加算の特例を適用すると、以下のように取得費に加算する相続税額を控除することができます。

譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 取得費に加算する相続税額 - 譲渡費用

取得費に加算する相続税額とは、以下の計算式で表されたものです。

その者の相続税額×その者の相続税の課税価格の計算の基礎とされたその譲渡した財産の価額その者の相続税の課税価格+その者の債務控除額

相続税を納めた人は、相続税と所得税等の二重課税を緩和するため、譲渡所得が少なく計算されるようになっています。

 

まとめ

相続のマンション売却についておさらいします。

1.マンションは将来建て替えが困難な資産であるため、不要なマンションはすぐに売却すべきです。

2.相続したマンションを売却するには名義変更が必要です。

3.相続マンションの売却では税金の節税特例は特にありません。取得費が分かることが最大の節税策となります。

相続したマンションは、なるべく早く売却すべきです。

まずは、共有のまま売るか、遺産分割して売るか、相続人同士で売却方針を決めるようにして下さい。

売却では譲渡所得が発生すると、税金が生じます。相続マンションの売却では、節税の特例がないため、取得費が明確となることが税金を抑えることになります。

相続が発生したら、まずはマンションの購入時の売買契約書を探すことから始めるようにして下さい。